はるみのGaribaldi
マスクをしたままアイスコーヒーのストローを咥えようとしていた。
―――雨水。
雪に替わって雨が降り、雪や氷が解けて水になる。
草木も芽吹き始め、春のきざしが見え、ドンピシャのタイミングで降る
雨が、カサカサした色々なものを湿らせる。
ぶらぶら歩きの途中、果物売り場で
艶々の「はるみ」を見つけた。
―――Garibaldi ガリバルディ。
イタリア統一の英雄の名を冠するカクテルである。
イタリアを代表するリキュール「カンパリ」と、英雄ガリバルディの率いた
「千人隊(赤シャツ隊)」の赤いイメージからイタリア人は彼を尊んで
「カンパリ・オレンジ」を「ガリバルディ」と呼ぶのだ。
Giuseppe Garibaldi ジュゼッペ・ガリバルディ(1807~1882)は船乗りの
子に生まれ、サルデーニャの海軍に入る。
ジェノヴァ蜂起や南米の独立戦争で活躍した軍人で、1860年シチリアからの
救援要請を受けて、ジェノヴァで千人隊(赤シャツ隊)と呼ばれる義勇軍を
組織し、これを率いてシチリア遠征した。
これによりブルボン家の支配するシチリア島とナポリの掌握は成功し、当時
すでに北イタリアの大半を併合していた、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
サルデーニャ国王に南イタリアを献上し、1861年10月26日イタリア統一王国の
樹立に貢献した。
ところが、その功を労い新国家での高位を約束した国王に対し、それをあっさり
辞退し小島のカブレラ島に帰ってしまう。
波乱万丈の生涯の中で、死地を何度も彷徨い功成ながら、無欲で、権力に執着
しない男だったという。
カンパリの入ったタンブラーに、搾りたての「はるみ果汁」を満たす。
雨音を聴きながら、爽やかなガリバルディを、イッキ飲み!
功成り名遂げて身退くは天の道なり・・・、
とは、こういう事だ、などと思ったりする。
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