「　よかったねぇ、もらってくれる人がいて　」
「　溝に捨てられなくてよかったねぇ　・　・　・　」。


ハサミで
収穫するたびに葡萄に話しかけている年配の農家さんのつぶやきである。

ある夜、ワイナリーから破棄されるところだった完熟葡萄が届けられた。
それは、南アルプス鮎沢地区のマスカットベリーA。



マスカットベリーAは、
川上善兵衛翁が1927年に、アメリカ葡萄のラブルスカ種ベリーと
ヨーロッパ葡萄のヴィニフェラ種マスカット・ハンブルグを交配して
作った日本生まれの黒葡萄である。
ワイン用と生食用の両方に使われ、日本が誇る「　甲州　」と並び、
日本の赤ワイン用として唯一ワイン国際品種に認定されている。

今回のベリーAは、南アルプスで最も遅採りの完熟葡萄だという。

オリオン座流星群が観られるかもな旧重陽の深夜。
天空の赤ワイン、ラピュータ Laputa になる前のベリーAを
皮付きのまま絞り、カシスとともにシェークしてグラスに注ぐ。



確か、このカクテルはプラトン Platon という名前が BAR RADIO の
尾崎氏から付けられていたはずである。



それにしても完熟葡萄　・　・　・　、甘露である。